87歳の母は、チョコンと小さな椅子に座り
私がお茶碗によそった炊き立てのご飯を
器用にスプーンですくって、口に運んでいる。
私は母のすぐ横に座り
母の湯飲みにほうじ茶なんかを注いでいる。
すると母が私の耳元で小さくささやいた。
お父さんが来たよ。
そうすると、死んだはずの父が
ひょっこりと現れて、母の隣の椅子に静かに腰を下ろした。
父は、太った体を、母の横の小さな椅子に押し込めて
生きていたころと違って、柔和な表情で黙って座っている。
ああお帰りなさい。
でも、私たちは知っていた。
あなたがここにずっといたことを。